過食嘔吐のはじまり
きっかけは生活環境の変化でした。
急増した体重
親元を離れ、寮生活が始まったことからはじまる、さまざまなストレス。
夏から始まった、最初の半年は無事に過ぎました。
半年を過ぎた頃、冬が来た頃から、「がんばらなければならない」「結果を出さなければ」という気持ちが大きくなるのに反比例して、いろいろなことがうまくいかなくなりました。
あるときから、一回の食事の量と間食の量とが急激に増えていきました。
今までの私は食べても食べても太ることがなかったため、「太るかもしれない」という危機感さえ持たずに食べつづけていました。
徐々にジーンズやスカートはきつくなり、体がだるく感じるようになってきました。
それでも、部屋に体重計がなかったせいもあり、自分が太ったことは気づかずに、というよりは、太りつつあることに気づきながらも、目をそらしていました。
友人の部屋で、体重計に乗るまでは。
とても寒かったその日、私はぶくぶくと着ぶくれしていたのを覚えています。
嫌な予感はあったので、たくさん着込んだ服のせいにしようと無意識に思っていたのかもしれません。
上着も脱がないまま、体重計に乗りました。
「・・・・・・!!」
そしてフリーズ。
体重は、半年前より6キロ増えていました。
私は心の中で「着ぶくれしてるせい」と自分に言い聞かせ、何事もなかった顔で、体重計を降りました。
けれど、着ている服全部合わせても、6キロもあるわけがありません。
自分が写った写真の衝撃
さらに追い討ちをかけたのは、友人が撮ってプリントしてくれた私の写真でした。
そこにいた私は、半年前とは別人でした。
アンパンマンのように、頬がペカペカ光っています。
友人もなにげなく、「ちょっとふっくらしたねー」と感想を述べました。
そのときの体重増加は、その後の激増からすれば、そこまでショックを受けるほどのものではなかったと、今は思えます。
けれどそのときには、「太るはずのない私が太った」ということで、頭は大パニックになりました。
すぐに衝動的に何食か抜きました。
状況さえ許せば、そこからずっと絶食していたかもしれません。
思い込むと、妙な完璧主義が発動して、頑固になってしまうところがあるのです。
幸か不幸か、当時は友人とほぼ毎日夕食を一緒に食べていたので、そう簡単に絶食しつづけるわけにはいきませんでした。
つねに人の目があると、過食や拒食にのめりこまずに済むと思うのですが、過食の定義にあるように、病気になると、人目を避けて欲求を満たそうとしはじめます。
友人を遠ざける
自分の変貌にショックを受けた私は、まず人のせいにしようとしはじめました。
「いつも一緒にご飯を食べる彼女が大食漢で、つられて食べてしまうから太ったんだ」
「しかも彼女は太らないなんて、そんなひどいことがあるだろうか」
彼女が「ふっくらした」と言ったことにも腹を立てました。
摂食障害になってから、怒ることが多くなった気がします。情緒不安定も症状のひとつです。
そして少しずつ、彼女と食べる夕食の数を減らしていきました。
最初は2日に1回、それから3日に1回…。
寂しがって、彼女は私の部屋によく遊びに来るようになりました。
毎回たくさんのお菓子を持って。
部屋にあがって座るとすぐにお菓子の袋を開けます。
彼女はそういう子でした。
寂しがり屋で、誰にでも子猫のようにすりよっていき、皆から可愛がられ、素直で正直で、そしてよく食べました。
もともと一人の時間が好きで、好きな人にしか自分を見せられない、頑なな部分を持つ私にとっては、彼女の開けっぴろげの明るさが羨ましかった。
彼女といることによって太ってしまったと思いこんだ私は、 次第に彼女に対して疎ましい気持ちを抱くようになっていきました。
それから私は、自分が見てショックを受けた写真を、遠距離恋愛中の彼に送りました。
「大丈夫だよ、気にすることはないよ」という彼の言葉、それだけを期待して。
電話をして、「太った?」とおそるおそる聞いた私に彼はこんなことを言いました。
「頼むから次会う時までには元に戻っててよ」
たんなる過食だけではない、嘔吐と下剤の多用が始まったのは、その電話からでした。
甘えん坊の彼女と過ごさなくなり、一人の時間が増え、過食と嘔吐の日々が始まったのです。
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